第9回 能動輸送と膜タンパク質

高校生物 第9回 能動輸送と膜タンパク質
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第9回 能動輸送と膜タンパク質

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1. 能動輸送とは

前回学んだ拡散・浸透はエネルギーを使わない 受動輸送であった。 一方、能動輸送とは、 細胞がATPなどの エネルギーを使って、 濃度勾配逆らって物質を輸送する仕組みである。 低濃度側から高濃度側へも運べるのが最大の特徴だ。

🎯 キーワード:濃度勾配に逆らう+ATPを消費」が能動輸送の定義。 細胞はこれによって内部のイオン濃度を 一定に保ち、恒常性を維持している。
2. 受動輸送との違い
項目受動輸送能動輸送
エネルギー 不要 ATP消費
移動方向 高濃度→低濃度(濃度勾配に従う) 低濃度→高濃度も可能
代表例 単純拡散促進拡散浸透 イオンポンプ共輸送
膜タンパク質 不要(単純拡散)またはチャネル担体 ポンプタンパク質が必須
3. 膜タンパク質の種類

膜タンパク質は 物質輸送において中心的な役割を果たす。 大きく3種類に分類される。

① チャネルタンパク質

チャネルタンパク質は 膜を貫く水溶性の通路を形成し、 特定のイオンや小分子を 濃度勾配に従って通す(受動輸送)。 例:Na⁺チャネル・K⁺チャネル・アクアポリン(水チャネル)。 開閉するゲートをもつものもある(ゲートチャネル)。

② 担体タンパク質(キャリア)

担体タンパク質は 特定の物質と結合して 構造変化(コンフォメーション変化)を起こし、 物質を膜の反対側へ移動させる。 エネルギー不要の促進拡散にも、 エネルギーを使う能動輸送にも関わる。 例:グルコース輸送体(GLUT)。

③ ポンプタンパク質

ポンプタンパク質ATPのエネルギーを使って 濃度勾配に逆らい物質を輸送する。 能動輸送の主役。 代表例はNa⁺-K⁺ポンプ

4. Na⁺-K⁺ポンプ — 能動輸送の代表例

Na⁺-K⁺ポンプ (ナトリウム・カリウム ATPアーゼ)は、 ほぼすべての動物細胞に存在するポンプタンパク質である。

Na⁺-K⁺ポンプの1サイクル
細胞外
Na⁺が多い
細胞内
K⁺が多い
Na⁺ × 3 を外へ排出
K⁺ × 2 を内へ取り込む
1回のサイクルでATP 1分子を消費

1回の動作でナトリウムイオン(Na⁺)を 3個細胞外へ排出し、 カリウムイオン(K⁺)を 2個細胞内へ取り込む。 どちらも濃度勾配に逆らった輸送なので、 ATPのエネルギー(加水分解)が必要。

この働きにより、細胞内は「Na⁺が少なく K⁺が多い」、 細胞外は「Na⁺が多く K⁺が少ない」という イオン濃度差膜電位)が 常に保たれる。

5. 能動輸送が支える生体機能

イオン濃度差を維持することが、さまざまな生命現象の基盤となっている。

  • 神経の情報伝達: Na⁺-K⁺ポンプが作る膜電位が 活動電位(神経インパルス)の 発生と回復を支える。
  • 筋肉の収縮: イオン濃度差に基づくシグナルが 筋収縮を引き起こす。 Ca²⁺ポンプも重要な役割を担う。
  • 細胞体積の調節: Na⁺の細胞内流入を防ぐことで浸透圧が保たれ、 細胞が過剰に膨張しない。
  • 腎臓での再吸収: Na⁺-K⁺ポンプが腎尿細管でのNa⁺再吸収を駆動する。
⚠️ 覚えておこう: 神経や筋肉が正常に機能するためには、 Na⁺-K⁺ポンプが 絶えずATPを消費し続けなければならない。 これが「細胞がエネルギーを必要とする」大きな理由の一つ。
6. 共輸送(二次能動輸送)

共輸送とは、 あるイオンの濃度勾配を 「エネルギー源」として利用し、別の物質を輸送する仕組みである。 直接ATPを使わないが、ポンプが作った濃度差を間接的に利用するため、 二次能動輸送とも呼ばれる。

代表例として、小腸上皮細胞での グルコースの吸収がある。 Na⁺が細胞内へ流れ込む勢いを利用して、 SGLT(Na⁺/グルコース共輸送体)が グルコースを同時に取り込む(同向輸送)。 Na⁺とグルコースが同じ方向に輸送される点が特徴。

7. エンドサイトーシスとエキソサイトーシス

膜タンパク質だけでは運べない大きな分子や粒子は、 膜そのものを使って出入りする。

エンドサイトーシス(取り込み)

エンドサイトーシスでは、 細胞膜が陥入して 細胞外の物質を小胞(ベシクル)で包み込み、 細胞内へ取り込む。
食作用(ファゴサイトーシス): 固形粒子(細菌・死細胞など)を取り込む。白血球が代表例。
飲作用(ピノサイトーシス): 液体や溶質を小胞に包んで取り込む。

エキソサイトーシス(放出)

エキソサイトーシスでは、 細胞内の分泌小胞が 細胞膜と融合し、 内容物を細胞外へ分泌する。
ホルモン・神経伝達物質・消化酵素などの タンパク質が このしくみで分泌される。 ゴルジ体から やってきた小胞が融合する。

8. まとめ — 細胞膜を通る輸送の全体像
輸送様式エネルギー方向主な担い手
単純拡散 不要高→低脂質二重層O₂、CO₂
促進拡散 不要高→低チャネル・担体グルコース、イオン
一次能動輸送 ATP直接低→高も可 ポンプNa⁺-K⁺ポンプ
二次能動輸送 濃度差を利用低→高も可 共輸送体SGLT(腸)
エンドサイトーシス ATP細胞外→内膜の陥入食作用、飲作用
エキソサイトーシス ATP細胞内→外小胞の融合ホルモン分泌
💡 テスト直前チェック:
① 能動輸送 = ATP消費 + 濃度勾配に逆らう
② 膜タンパク質3種:チャネル(通路)・担体(結合・構造変化)・ポンプ(ATP消費)
③ Na⁺-K⁺ポンプ:Na⁺を3個外へ、K⁺を2個内へ(ATP 1個消費)
④ 共輸送 = イオン濃度差を利用して別物質も運ぶ(二次能動輸送)
⑤ エンドサイトーシス(取り込み)・エキソサイトーシス(放出)は大きな分子に使う
📝 確認テスト(一問一答)
Q1. ATPを消費し、濃度勾配に逆らって物質を輸送する仕組みを何というか?
A. 能動輸送
Q2. 膜を貫く水溶性の通路を形成し、イオンなどを受動的に通すタンパク質を何というか?
A. チャネルタンパク質
Q3. 特定の物質と結合して構造変化し、能動・受動どちらにも関わる膜タンパク質は?
A. 担体タンパク質
Q4. Na⁺を3個細胞外へ、K⁺を2個細胞内へ輸送するポンプを何というか?
A. Na⁺-K⁺ポンプ
Q5. あるイオンの濃度勾配を利用して別の物質を運ぶ輸送を何というか?
A. 共輸送
Q6. 細胞膜が陥入して細胞外の物質を小胞に包んで取り込む現象を何というか?
A. エンドサイトーシス
Q7. 細胞内の分泌小胞が細胞膜と融合して内容物を放出する現象を何というか?
A. エキソサイトーシス
Q8. 白血球が細菌などの固形粒子を取り込むエンドサイトーシスを特に何というか?
A. 食作用
Q9. Na⁺-K⁺ポンプが作るイオン濃度差が発生・回復を支える、神経の電気的興奮を何というか?
A. 活動電位
Q10. ポンプが作ったNa⁺の濃度差を使ってグルコースを小腸から吸収する共輸送体を何というか?
A. SGLT

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