第9回 能動輸送と膜タンパク質
前回学んだ拡散・浸透はエネルギーを使わない 受動輸送であった。 一方、能動輸送とは、 細胞がATPなどの エネルギーを使って、 濃度勾配に 逆らって物質を輸送する仕組みである。 低濃度側から高濃度側へも運べるのが最大の特徴だ。
| 項目 | 受動輸送 | 能動輸送 |
|---|---|---|
| エネルギー | 不要 | ATP消費 |
| 移動方向 | 高濃度→低濃度(濃度勾配に従う) | 低濃度→高濃度も可能 |
| 代表例 | 単純拡散・促進拡散・浸透 | イオンポンプ・共輸送 |
| 膜タンパク質 | 不要(単純拡散)またはチャネル・担体 | ポンプタンパク質が必須 |
膜タンパク質は 物質輸送において中心的な役割を果たす。 大きく3種類に分類される。
チャネルタンパク質は 膜を貫く水溶性の通路を形成し、 特定のイオンや小分子を 濃度勾配に従って通す(受動輸送)。 例:Na⁺チャネル・K⁺チャネル・アクアポリン(水チャネル)。 開閉するゲートをもつものもある(ゲートチャネル)。
担体タンパク質は 特定の物質と結合して 構造変化(コンフォメーション変化)を起こし、 物質を膜の反対側へ移動させる。 エネルギー不要の促進拡散にも、 エネルギーを使う能動輸送にも関わる。 例:グルコース輸送体(GLUT)。
ポンプタンパク質は ATPのエネルギーを使って 濃度勾配に逆らい物質を輸送する。 能動輸送の主役。 代表例はNa⁺-K⁺ポンプ。
Na⁺-K⁺ポンプ (ナトリウム・カリウム ATPアーゼ)は、 ほぼすべての動物細胞に存在するポンプタンパク質である。
Na⁺が多い
K⁺が多い
1回の動作でナトリウムイオン(Na⁺)を 3個細胞外へ排出し、 カリウムイオン(K⁺)を 2個細胞内へ取り込む。 どちらも濃度勾配に逆らった輸送なので、 ATPのエネルギー(加水分解)が必要。
この働きにより、細胞内は「Na⁺が少なく K⁺が多い」、 細胞外は「Na⁺が多く K⁺が少ない」という イオン濃度差(膜電位)が 常に保たれる。
イオン濃度差を維持することが、さまざまな生命現象の基盤となっている。
- 神経の情報伝達: Na⁺-K⁺ポンプが作る膜電位が 活動電位(神経インパルス)の 発生と回復を支える。
- 筋肉の収縮: イオン濃度差に基づくシグナルが 筋収縮を引き起こす。 Ca²⁺ポンプも重要な役割を担う。
- 細胞体積の調節: Na⁺の細胞内流入を防ぐことで浸透圧が保たれ、 細胞が過剰に膨張しない。
- 腎臓での再吸収: Na⁺-K⁺ポンプが腎尿細管でのNa⁺再吸収を駆動する。
共輸送とは、 あるイオンの濃度勾配を 「エネルギー源」として利用し、別の物質を輸送する仕組みである。 直接ATPを使わないが、ポンプが作った濃度差を間接的に利用するため、 二次能動輸送とも呼ばれる。
代表例として、小腸上皮細胞での グルコースの吸収がある。 Na⁺が細胞内へ流れ込む勢いを利用して、 SGLT(Na⁺/グルコース共輸送体)が グルコースを同時に取り込む(同向輸送)。 Na⁺とグルコースが同じ方向に輸送される点が特徴。
膜タンパク質だけでは運べない大きな分子や粒子は、 膜そのものを使って出入りする。
エンドサイトーシスでは、
細胞膜が陥入して
細胞外の物質を小胞(ベシクル)で包み込み、
細胞内へ取り込む。
・食作用(ファゴサイトーシス):
固形粒子(細菌・死細胞など)を取り込む。白血球が代表例。
・飲作用(ピノサイトーシス):
液体や溶質を小胞に包んで取り込む。
エキソサイトーシスでは、
細胞内の分泌小胞が
細胞膜と融合し、
内容物を細胞外へ分泌する。
ホルモン・神経伝達物質・消化酵素などの
タンパク質が
このしくみで分泌される。
ゴルジ体から
やってきた小胞が融合する。
| 輸送様式 | エネルギー | 方向 | 主な担い手 | 例 |
|---|---|---|---|---|
| 単純拡散 | 不要 | 高→低 | 脂質二重層 | O₂、CO₂ |
| 促進拡散 | 不要 | 高→低 | チャネル・担体 | グルコース、イオン |
| 一次能動輸送 | ATP直接 | 低→高も可 | ポンプ | Na⁺-K⁺ポンプ |
| 二次能動輸送 | 濃度差を利用 | 低→高も可 | 共輸送体 | SGLT(腸) |
| エンドサイトーシス | ATP | 細胞外→内 | 膜の陥入 | 食作用、飲作用 |
| エキソサイトーシス | ATP | 細胞内→外 | 小胞の融合 | ホルモン分泌 |
① 能動輸送 = ATP消費 + 濃度勾配に逆らう
② 膜タンパク質3種:チャネル(通路)・担体(結合・構造変化)・ポンプ(ATP消費)
③ Na⁺-K⁺ポンプ:Na⁺を3個外へ、K⁺を2個内へ(ATP 1個消費)
④ 共輸送 = イオン濃度差を利用して別物質も運ぶ(二次能動輸送)
⑤ エンドサイトーシス(取り込み)・エキソサイトーシス(放出)は大きな分子に使う
A. 能動輸送
A. チャネルタンパク質
A. 担体タンパク質
A. Na⁺-K⁺ポンプ
A. 共輸送
A. エンドサイトーシス
A. エキソサイトーシス
A. 食作用
A. 活動電位
A. SGLT
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