第4回 原核細胞の構造
生物の細胞は大きく2種類に分けられる。 原核細胞と 真核細胞だ。 この2つの最も大きな違いは、核膜に包まれた 核を持つかどうかである。
原核細胞は進化的に古いタイプで、構造が単純。 真核細胞より小さく、細胞内に細胞小器官をほとんど持たない。
核膜で囲まれた核を持たない細胞を原核細胞という。 遺伝情報を担うDNAは核膜に包まれず、 細胞質の中に核様体と呼ばれる領域として存在している。
原核細胞からなる生物を原核生物、 真核細胞からなる生物を真核生物という。
原核生物の代表例は細菌(バクテリア)である。 身近な例としては大腸菌(Escherichia coli)がよく知られる。
もう1つの重要な例がシアノバクテリア(ラン藻)だ。 光合成を行う原核生物で、地球上に初めて酸素を供給したとされる重要なグループである。 ※ シアノバクテリアは「藻」という名前を持つが、植物ではなく原核生物であることに注意。
原核細胞の主なパーツとその役割を覚えよう。
細胞膜
リン脂質の二重層でできており、
物質を選んで通す選択的透過性を持つ。
原核細胞でも真核細胞でも共通する最も基本的な構造。
リボソーム
タンパク質合成を行う細胞内の小粒子。
原核細胞では70S型(真核細胞は80S型)と小さい。
原核細胞でもリボソームは存在することは頻出の引っかけポイント。
細胞壁
細菌の細胞壁の主成分はペプチドグリカンという多糖類とアミノ酸の複合物。
植物の細胞壁はセルロース製であり、成分が異なる。
莢膜(きょうまく)
病原細菌の病原性(宿主への侵入力・免疫回避能力)に関わる。
持つ種と持たない種がある。
鞭毛
細菌の鞭毛はタンパク質(フラジェリン)でできたらせん状の構造で、
モーターのように回転して細胞を動かす。
真核細胞の鞭毛とは構造が大きく異なる。
原核細胞のDNAは環状(リング状)で、 通常1本の染色体として存在する。 ヒストンタンパク質とは基本的に結合しておらず、 核様体と呼ばれる領域にまとまっている。
また、染色体とは別に小さな環状DNAであるプラスミドを持つ場合もある。 プラスミドには薬剤耐性など補助的な遺伝情報が含まれることが多く、 遺伝子工学のツールとして広く利用されている。
- 大きさ:1〜5μm程度(真核細胞は10〜100μm)
- 核膜:なし(これが最大の特徴)
- ミトコンドリア・葉緑体などの細胞小器官:ない
- リボソーム:ある(原核・真核共通)
- 分裂速度:非常に速い(二分裂で20〜30分に1回)
原核生物は二分裂(binary fission)によって増殖する。 有糸分裂のような複雑な仕組みは必要なく、DNAを複製して細胞を2つに分けるだけで 無性生殖が完結する。 条件が整えば非常に速く増殖できるため、食中毒や感染症の原因となりうる。
| 項目 | 原核細胞 | 真核細胞 |
|---|---|---|
| 核膜 | なし | あり |
| DNAの形 | 環状 | 線状(複数本) |
| 大きさ | 小さい(1〜5μm) | 大きい(10〜100μm) |
| 細胞小器官 | ほぼなし | あり(ミトコンドリア・ゴルジ体など) |
| リボソーム | あり(70S) | あり(80S) |
| 細胞壁 | あり(ペプチドグリカン) | 植物・菌類はあり(成分は異なる) |
| 代表例 | 大腸菌・シアノバクテリア | 動物・植物・菌類・原生生物 |
リボソームは原核・真核細胞の両方に存在する唯一の細胞内構造(細胞小器官には分類されない)。
原核生物(細菌)は生態系の分解者として重要である。 死んだ生物の有機物を無機物に分解し、 物質循環に不可欠な役割を担う。
また、ヒトの腸内には腸内細菌が数百種・数十兆個も共生しており、 消化・免疫に深く関わっている。一方で病原菌(コレラ菌・結核菌など)も 原核生物に含まれ、感染症の原因となる。
A. 原核細胞
A. 核様体
A. シアノバクテリア
A. 環状
A. リボソーム
A. ペプチドグリカン
A. プラスミド
A. 二分裂
A. 70S
A. 分解者
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