第6回 細胞小器官(核・ミトコンドリア等)
細胞小器官(オルガネラ)とは、 真核細胞の中に存在する、 特定のはたらきをもつ構造のことである。 細胞の中にある「器官」のようなものと考えるとわかりやすい。 それぞれの小器官が機能分担することで、 複雑な生命活動を効率よく行うことができる。 多くの細胞小器官は膜によって 細胞質から仕切られており、異なる化学反応を同時に進めることが可能になっている。
核は細胞で最も重要な小器官であり、 核膜(二重膜)に包まれている。 内部にはDNAが 染色体として格納されており、 遺伝情報の保存と発現の中心となっている。 「細胞の設計図保管室」と覚えるとよい。
核の内部には核小体(仁)があり、 リボソームを構成するrRNAがここで合成される。 核膜には核膜孔という穴が多数存在し、 mRNAやタンパク質などの物質が出入りする。
ミトコンドリアは 「細胞の発電所」と呼ばれる。 細胞呼吸によって 有機物(グルコースなど)を酸化分解し、 生命活動のエネルギー通貨であるATPを 効率よく産生する。
外膜と内膜からなる二重膜構造をもち、 内膜が複雑に折りたたまれたクリステが特徴的な構造である。 発展事項として、ミトコンドリアは独自のDNAと リボソームをもつことが知られており、 これは内共生説(もともと独立した細菌が細胞内に取り込まれたという学説)の 根拠となっている。ミトコンドリアは動物細胞・植物細胞の両方に存在する。
葉緑体は 植物細胞にのみ見られる細胞小器官で、 光合成を行う「光合成工場」である。 光エネルギーを使って 水とCO₂から有機物(グルコースなど)を合成する。
葉緑体もミトコンドリアと同様に二重膜構造をもつ。 内部には扁平な袋状のチラコイドが 積み重なったグラナが存在する。 光合成の明反応はチラコイド膜上で行われ、 暗反応(カルビン回路)はストロマ(基質部分)で行われる。 葉緑体もミトコンドリアと同様に独自のDNAをもつ(内共生説の根拠)。
小胞体は 細胞内に広がる膜状の網目構造で、「細胞内の工場・通路」のような役割を担う。 表面にリボソームが付着した 粗面小胞体は タンパク質の合成・修飾・輸送に関わる。 一方、リボソームをもたない 滑面小胞体は 脂質の合成や物質の輸送などを担う。
リボソームは タンパク質合成の場である。 細胞小器官の中で唯一膜構造をもたない。 rRNAとタンパク質から構成されており、 mRNAの塩基配列をもとに アミノ酸を並べてタンパク質を合成する。
真核細胞のリボソームは80S型である。 重要なポイントとして、リボソームは 原核細胞にも存在する (ただし 70S 型)。「膜をもたない → 原核にも真核にもある」という点は試験頻出。
ゴルジ体は 扁平な袋(シスターナ)が重なった構造で、 「加工・配送センター」の役割を果たす。 粗面小胞体から運ばれたタンパク質を 加工(糖の付加・切断など)し、 小胞に包んで 細胞内外の目的地へ輸送する。 特に分泌タンパク質の処理に重要な役割を担う。
リソソームは 加水分解酵素を多く含む袋状の小器官で、 「細胞の掃除役」と言える。 古くなった細胞小器官や、食作用で取り込んだ異物・細菌などを 分解する。 主に動物細胞に多く見られる。
液胞は 細胞液を含む袋状の構造で、特に 植物細胞の成熟した細胞で大きく発達する。 水分・無機塩類・有機酸・色素などを蓄え、 膨圧によって 細胞の形を保つはたらきがある。 動物細胞にも小さな液胞は存在するが、植物細胞ほど発達していない。
中心体は 動物細胞に明確に見られる小器官で、 細胞分裂のときに重要な役割を担う。 中心体から紡錘糸が伸び、 染色体を細胞の両極へ引っ張る働きをする。 高等植物細胞では中心体が存在せず、別の機構で細胞分裂を行う。
「何をする場所か」をたとえとともに整理しよう。
| 細胞小器官 | 主なはたらき | たとえ | 動物細胞 | 植物細胞 |
|---|---|---|---|---|
| 核 | 遺伝情報(DNA)の保存・発現 | 設計図の保管室 | ○ | ○ |
| ミトコンドリア | 細胞呼吸・ATP産生 | 発電所 | ○ | ○ |
| 葉緑体 | 光合成(有機物合成) | 光合成工場 | × | ○ |
| リボソーム | タンパク質合成 | タンパク質工場 | ○ | ○ |
| 小胞体 | タンパク質・脂質の合成・輸送 | 工場内の通路 | ○ | ○ |
| ゴルジ体 | タンパク質の加工・分泌 | 加工・配送センター | ○ | ○ |
| リソソーム | 細胞内消化(不要物の分解) | 掃除役 | ○ | △ |
| 液胞 | 物質の貯蔵・膨圧維持 | 貯水タンク | △ | ○ |
| 中心体 | 紡錘糸形成(細胞分裂) | 分裂指揮所 | ○ | × |
植物細胞のみに存在するものとして、 細胞壁・ 葉緑体・ 大きな液胞がある。 一方、動物細胞のみに 中心体が はっきりと見られる。 核・ ミトコンドリア・ 小胞体・ゴルジ体・リボソームは両方の細胞に共通して存在する。
真核細胞は膜で囲まれた細胞小器官をもつが、 原核細胞(大腸菌・シアノバクテリアなど)は 核や膜性の細胞小器官をほとんどもたない。 ただし、リボソームは 原核細胞にも存在する点は重要。 原核細胞のリボソームは70S型で、 真核細胞の 80S 型とは異なる(抗生物質はこの違いを利用して作られるものもある)。
① 細胞小器官 = 真核細胞の特徴的な構造(原核細胞にはほぼない)
② ミトコンドリア=発電所(ATP産生)、葉緑体=光合成工場
③ 植物のみ:細胞壁・葉緑体・大きな液胞 動物のみ:中心体
④ リボソームは膜構造なし → 原核・真核ともに存在(引っかけ注意!)
⑤ ミトコンドリア・葉緑体は独自DNAをもつ → 内共生説の根拠
A. 核
A. ミトコンドリア
A. 葉緑体
A. リボソーム
A. ゴルジ体
A. リソソーム
A. 液胞
A. 二重膜
A. 中心体
A. 粗面小胞体
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