第1回 生物とは — 生物の特徴
結論:生物とは、細胞をもち、代謝を行い、自己複製できる存在である。
私たちの周りには動物・植物・菌類など無数の生物が存在する。 これらはすべて「生きている」存在だが、「生きている」とはどういうことか?
生物と無生物(石・水・空気など)の最大の違いは、代謝を行うかどうかである。 代謝とは体内で化学反応を起こしてエネルギーを得たり物質を変換したりする働きのこと。無生物にはこの仕組みがない。
また、すべての生物は細胞という構造単位からできている。 これは「細胞説」として19世紀に確立された重要な概念である。
生物には以下の7つの共通した特徴がある。これが「生物の定義」にもなっている。
- ① 細胞からできている(細胞構造)
- ② 代謝を行う(同化・異化)
- ③ 恒常性(ホメオスタシス)を保つ
- ④ 刺激に応答する
- ⑤ 成長・発生する
- ⑥ 生殖・遺伝を行う
- ⑦ 進化する(集団・世代レベル)
これらの特徴をすべて満たすものだけが生物とみなされる。
すべての生物の基本単位は細胞である。 19世紀に植物学者シュライデン(1838年)と 動物学者シュワン(1839年)が 「すべての生物は細胞からなる」という細胞説を提唱した。
細胞の数による分類:
- ・単細胞生物:1個の細胞だけで生きる(例:アメーバ・大腸菌・ゾウリムシ)
- ・多細胞生物:多数の細胞が集まってできている(例:ヒト・植物)
細胞の構造による分類:
- ・原核細胞:核膜をもたず、DNAが細胞質中に存在(例:細菌・古細菌)
- ・真核細胞:核膜に包まれた明確な核をもつ(例:動物・植物・菌類)
生物の体内で起こるすべての化学反応の総称を代謝という。代謝は大きく2つに分けられる。
- ・同化(アナボリズム):エネルギーを使って単純な物質から複雑な物質を合成する(例:光合成・タンパク質合成)
- ・異化(カタボリズム):複雑な物質を分解してエネルギーを取り出す(例:細胞呼吸・発酵)
代謝で得られたエネルギーはATP(アデノシン三リン酸)という物質に蓄えられ、様々な生命活動に利用される。ATPは「生命のエネルギー通貨」とも呼ばれる。
生物が体内環境を一定の範囲に保つ仕組みを恒常性(ホメオスタシス)という。外部環境が変化しても体内の状態を一定に保つことができる。
具体例:
- ・体温調節:暑いときは汗をかき、寒いときは震えて熱を産生し、体温を約37℃に保つ
- ・血糖値の調節:食後に血糖が上がるとインスリンが分泌され正常範囲に戻す
恒常性は神経系・内分泌系・免疫系が連携して維持されている。
生物は自分と同じ種類の子孫を残すことができる。これを生殖という。
- ・無性生殖:親が1個体で行う生殖(例:分裂・出芽・栄養生殖)。子は親と遺伝的に同一。
- ・有性生殖:雌雄の配偶子が合体して新個体をつくる。遺伝的多様性が生まれる。
親から子への形質の伝達を遺伝という。 遺伝情報はDNA(デオキシリボ核酸)という分子に塩基の配列として書き込まれており、細胞分裂のたびに正確に複製されて子に受け継がれる。
DNAに書かれた情報によって決まる個体の特徴を形質という(例:目の色・血液型・花の色など)。
生物が世代を重ねる中で、集団の遺伝的な性質が変化していくことを進化という。進化は個体の一生の中では起こらず、集団・世代レベルの変化である。
進化の主なメカニズムが自然選択である。「環境に適した形質をもつ個体が生き残りやすく、より多くの子孫を残す」という考え方で、ダーウィンが提唱した。
自然選択の繰り返しにより様々な環境に適応した生物が生まれ、現在の生物多様性が生まれたと考えられている。
生物は以下の階層的な構造をもつ(小→大):
分子 → 細胞 → 組織 → 器官 → 個体 → 個体群 → 群集 → 生態系
例えばヒトの場合、タンパク質などの分子が集まって細胞となり、同じ働きをする細胞が集まって組織(筋肉・上皮など)となり、複数の組織が集まって器官(心臓・胃など)となり、器官がまとまって個体(ヒト)となる。
| 特徴 | 生物 | 無生物(例:石・水) |
|---|---|---|
| 細胞構造 | あり(細胞からできている) | なし |
| 代謝 | あり(同化・異化) | なし |
| 増殖 | できる(生殖) | できない |
| 刺激への応答 | あり | なし |
| 恒常性 | あり | なし |
| 遺伝情報(DNA) | あり | なし |
| 進化 | する(集団レベル) | しない |
「生物とは、細胞をもち、代謝を行い、自己を複製し、環境に応答し、進化できる存在である。」
共通特徴チェックリスト:
- ☑ 細胞からできている
- ☑ 代謝(同化・異化)を行う
- ☑ 恒常性(ホメオスタシス)を保つ
- ☑ 刺激に応答する
- ☑ 成長・発生する
- ☑ 生殖・遺伝を行う
- ☑ 進化する(集団レベル)
ウイルスは生物と無生物の境界的な存在として有名である。
- ・細胞をもたない(タンパク質の殻と遺伝情報のみ)
- ・自己増殖できない(宿主細胞を利用してのみ増殖)
- ・代謝を行わない
- ・遺伝情報(DNA または RNA)をもつ
- ・進化する(変異・自然選択が起こる)
これらの理由からウイルスは「生物の定義を完全には満たさないが、生物に近い性質をもつ存在」として生物と無生物の中間と位置づけられることが多い。
現在の生物学では、ウイルスを非細胞性生物として別に分類することが多い。厳密には「生物ではない」とされることもある。
※ 高校生物では「ウイルスは細胞をもたないため生物とは言えない」と覚えておけば十分。
A. 細胞
A. 代謝
A. 恒常性
A. 原核細胞
A. 真核細胞
A. 同化
A. 異化
A. ATP
A. 自然選択
A. DNA
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