第3回 細胞の観察法(顕微鏡)
細胞は肉眼では見ることができない。生物の体の仕組みを理解するには 顕微鏡を使った観察が欠かせない。 細胞の発見も、顕微鏡技術の進歩とともに進んできた。
1665年、イギリスの科学者 フック(Robert Hooke)がコルクの断面を 自作の顕微鏡で観察し、小さな部屋のような構造を発見して「cell(細胞)」と名付けた。 その後、オランダの レーウェンフック(van Leeuwenhoek)が 高倍率の顕微鏡を自作し、微生物(原生動物や細菌)を世界で初めて観察した。
生物学の発展 = 観察技術の発展といえるほど、 顕微鏡の改良は生物学の歴史と深く結びついている。
① 光学顕微鏡(最重要)
学校の実験で使う基本の顕微鏡。
可視光(人間の目に見える光)を使って試料を拡大する。
光学顕微鏡の最大の特長は、
生きた細胞をそのまま観察できる点である。
倍率は数十〜千倍程度で、染色したプレパラートを用いることが多い。
② 電子顕微鏡(発展)
光の代わりに電子線を使う顕微鏡で、非常に高倍率(数万〜数十万倍)の観察が可能。
ただし、試料を乾燥・固定する処理が必要なため、
電子顕微鏡では生きた細胞は観察できない。
電子顕微鏡には2種類ある。
・SEM(走査型電子顕微鏡):試料の表面構造を立体的に観察する。
・TEM(透過型電子顕微鏡):電子線を試料に透過させ、内部構造を観察する。
各パーツの名称と役割をセットで覚えよう。
| パーツ名 | 役割 |
|---|---|
| 接眼レンズ | 目に近い側のレンズ。対物レンズで拡大された像をさらに拡大する |
| 対物レンズ | 試料に近い側のレンズ。実際に試料を拡大する |
| レボルバー | 対物レンズを取り付ける回転部品。倍率の切り替えに使う |
| ステージ | プレパラートを置く台 |
| 反射鏡(または光源) | 光を試料に当てる。電動光源の場合は光源装置が内蔵されている |
| 絞り(しぼり) | 光の量(明るさ)を調整する |
| 粗動ねじ | ステージを大きく上下させ、おおまかなピントを合わせる |
| 微動ねじ | ステージを細かく上下させ、精密なピントを合わせる |
| 鏡筒 | 接眼レンズと対物レンズをつなぐ筒状の部品 |
顕微鏡の総合倍率は次の式で求める。
総合倍率 = 接眼レンズの倍率 × 対物レンズの倍率
例:接眼レンズ 10倍 × 対物レンズ 40倍 = 400倍
分解能とは、「2点を2点として区別できる最小の距離」のことである。 分解能が小さいほど、細かい構造まで見分けることができる。
光学顕微鏡の分解能の限界は約0.2μm(マイクロメートル)である。 これ以上の高分解能が必要な場合は電子顕微鏡を使う。 電子顕微鏡の分解能は0.2nm(ナノメートル)程度で、光学顕微鏡の約1000倍の細かさを見分けられる。
光学顕微鏡で見える像は倒立像(上下左右が逆転した像)になる。 これはレンズを通ることで光が屈折するためである。
実際の動きと逆に見えることを理解しておこう。
例:プレパラートを右に動かす → 視野の中の像は左に移動して見える。
また、倍率と視野・明るさの関係をまとめると次のようになる。
| 倍率を上げると… | 変化 |
|---|---|
| 視野の広さ | 狭くなる(面積は倍率の2乗で縮小) |
| 明るさ | 暗くなる |
| ピントの合う範囲(焦点深度) | 浅くなる |
プレパラートは次の手順で作る。
- スライドガラスの上に試料を薄く置く
- 水や染色液を1〜2滴垂らす
- カバーガラスを斜め45°から静かにかぶせる(気泡を入れないため)
- 余分な水はろ紙で吸い取る
主な染色液
- ヨウ素液:デンプンを青紫色に染める。タマネギ鱗片葉の細胞壁・デンプン観察に使用。
- 酢酸カーミン:核・染色体を赤色に染める。
- 酢酸オルセイン:核・染色体を赤紫色に染める。酢酸カーミンと同様の目的で使用。
- メチレンブルー:核を青色に染める。口腔上皮細胞の観察などに使用。
- まず低倍率で全体を確認する(視野が広く、試料を見つけやすい)
- 観察したい部分を視野の中央に移動させる
- 横から見ながら粗動ねじでプレパラートに対物レンズを近づける
- 接眼レンズをのぞきながら微動ねじでピントを合わせる
- 高倍率に切り替え、さらに精密に観察する
また、ピントを合わせるとき、対物レンズとプレパラートを 近づける方向で合わせ始めると、プレパラートを割る危険がある。 必ず横から確認しながら行うこと。
顕微鏡で細胞の実際の大きさを測定するにはミクロメーターを使う。 2種類のミクロメーターを組み合わせて使う。
- 接眼ミクロメーター:接眼レンズの中に入れる目盛り付きガラス。1目盛りの実際の長さは倍率によって変わる。
- 対物ミクロメーター:ステージに置く。1目盛り=10μm(固定値)。接眼ミクロメーターの1目盛りの長さを計算するために使う。
計算手順: 対物ミクロメーターN目盛り = 接眼ミクロメーターM目盛りであれば、 接眼ミクロメーター1目盛り = N×10μm ÷ M
試料を染色するのは、構造を見やすくするためである。 特に核や染色体は無色透明なため、 染色しないと識別しにくい。染色液の種類によって染まる構造が異なるので、 目的に合わせた染色液を選ぶことが重要である。
| 試料 | 観察できるもの | よく使う染色液 |
|---|---|---|
| タマネギ鱗片葉の表皮 | 細胞壁・核・液胞(植物細胞の基本構造) | ヨウ素液(デンプン検出)または酢酸カーミン(核) |
| オオカナダモの葉 | 葉緑体・細胞質流動(原形質流動) | 染色なし(生きた細胞をそのまま観察) |
| 口腔上皮細胞 | 動物細胞(核・細胞膜)。細胞壁・葉緑体はない。 | メチレンブルー・酢酸カーミン |
現代の生命科学では、光学顕微鏡を発展させた 共焦点レーザー顕微鏡が広く使われる。 試料の特定の分子に蛍光物質を結合させ、 蛍光染色することで、生きた細胞の特定のタンパク質や構造をリアルタイムで観察できる。 また、共焦点レーザー顕微鏡は試料の奥行き方向も分けて撮影できるため、 細胞内部の立体的な構造を再構成することも可能である。
まとめ — テスト直前チェック
- 総合倍率 = 接眼レンズ倍率 × 対物レンズ倍率
- 光学顕微鏡の分解能の限界:約0.2μm
- 像は上下左右逆(倒立像)
- 倍率↑ → 視野↓・明るさ↓
- 観察手順:低倍率 → 高倍率
- カバーガラスは斜め45°からかけて気泡を防ぐ
- 対物ミクロメーター1目盛り = 10μm(固定値)
A. フック
A. 接眼レンズ×対物レンズ
A. 倒立像(上下左右逆)
A. 0.2μm
A. 10μm
A. 酢酸カーミン
A. 気泡を防ぐため
A. 低倍率
A. SEM(走査型電子顕微鏡)
A. オオカナダモ
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