第10回 細胞壁(植物細胞)
細胞壁は、 植物細胞において 細胞膜の 外側に存在する、 硬くて丈夫な構造である。 動物細胞には細胞壁がない点が、 植物細胞との大きな違いの一つだ。
細胞壁の主な働きは、細胞の 形を保ち、 外部からの機械的ストレスから細胞を 保護することである。 また植物全体の支持にも関わり、 茎や葉が立つことを可能にする重要な構造だ。
細胞壁 → 外側・硬い・支持・保護/細胞膜 → 内側・やわらかい・物質調節
植物細胞の細胞壁の主成分は セルロースである。 セルロースはグルコースが 多数結合した多糖類で、 植物繊維の主体でもある。 強度が非常に高く、紙や木材の原料としても知られる。
セルロースのほかにも、細胞どうしを接着する ペクチンや、 セルロース繊維をつなぐヘミセルロースが 含まれる。これらが組み合わさり、 格子状に積み重なることで 高い強度が生まれる。
- 形の維持: 細胞に一定の形状を与え、 外力に対して変形しにくくする。
- 膨圧に耐える: 浸透によって水が流入し内側から 膨圧がかかっても、 細胞壁があるため破裂しない。 この張りの状態を膨圧状態という。
- 植物体の支持: 茎や 葉が重力に逆らって立つのは、 細胞壁による機械的支持が あるからである。
- 保護: 病原体の侵入や 物理的な損傷から細胞を守る 物理的バリアとして機能する。
細胞膜と細胞壁は位置が近く混同しやすいが、機能が大きく異なる。
| 比較項目 | 細胞壁 | 細胞膜 |
|---|---|---|
| 場所 | 細胞膜の外側 | 細胞壁の内側(細胞質を囲む) |
| 主成分 | セルロース(多糖類) | リン脂質二重層+タンパク質 |
| 主な機能 | 支持・保護 | 選択的透過性(物質の出入り調節) |
| 透過性 | 多くの物質が自由に通過できる | 物質を選別して通す |
| 存在する細胞 | 植物・菌類・細菌 | すべての細胞に存在 |
細胞壁の重要な役割の一つが、 膨圧の支持である。 細胞が水を吸収すると浸透圧の差によって 水が細胞内に流入し、 内側から外側へ圧力(膨圧)がかかる。 細胞壁はこの圧力を受け止めて 細胞が破裂するのを防ぐ。
低張液に入れると
浸透によって水が細胞内へ流入。
膨圧が上がり、細胞は張りのある状態になる(膨圧状態)。
細胞壁があるため破裂せず形が保たれる。
→ 植物がしゃんと立つ状態。
高張液に入れると水が
細胞外へ出ていく。
原形質(細胞膜+細胞質)が
縮み、細胞壁から離れる現象を
原形質分離という。
→ 植物がしおれる原因の一つ。
原形質分離では細胞膜と 細胞質が収縮して 細胞壁から離れるが、 細胞壁は硬いため そのまま残る。 原形質分離は可逆的であり、 再び低張液に移すと原形質復帰(デプラスモリシス)が起こる。
① 水が入る → 膨圧↑ → 細胞壁が支えて張りを保つ
② 水が出る → 膨圧↓ → しおれ → 高張すぎると原形質分離
● 一次細胞壁と二次細胞壁
成長中の細胞が持つのが 一次細胞壁で、 比較的薄く柔軟性がある。 細胞分裂や伸長成長のとき、一次細胞壁は引き伸ばされながら拡張できる。 一方、細胞が成熟すると一次細胞壁の内側に 二次細胞壁が形成される場合がある。 二次細胞壁にはリグニンが沈着することで 木化(木部細胞・道管など)し、非常に強固になる。
● 他の生物の細胞壁との比較
主成分はセルロース(β-グルカン)。 高強度かつ柔軟性もあり、細胞成長にも対応する。
主成分はキチン(N-アセチルグルコサミンの重合体)。 昆虫の外骨格と同じ物質。
主成分はペプチドグリカン。 抗生物質の一部はこの 合成を阻害することで細菌を殺す。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 位置 | 細胞膜の外側 |
| 植物の主成分 | セルロース(多糖類・グルコース重合体) |
| 主な役割 | 支持・保護・膨圧支持 |
| 選択的透過性 | なし(細胞膜の機能) |
| 菌類の成分 | キチン |
| 細菌の成分 | ペプチドグリカン |
① 細胞壁は細胞膜の外側に存在(動物細胞にはない)
② 植物の主成分=セルロース/菌類=キチン/細菌=ペプチドグリカン
③ 膨圧で破裂しないのは細胞壁があるから
④ 高張液中で原形質分離→細胞壁は残り、細胞膜・細胞質が離れる
⑤ 二次細胞壁にはリグニンが沈着→木化
A. 細胞壁
A. セルロース
A. 細胞膜
A. 膨圧
A. 原形質分離
A. リグニン
A. キチン
A. ペプチドグリカン
A. ペクチン
A. 細胞壁
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