第2回 細胞説と歴史
現代生物学のすべての基礎は「生物は細胞からできている」という考えにある。 この考えが生まれる前、人々は生物の体の仕組みをほとんど知らなかった。 細胞説の確立によって、「生物=細胞の集合体」という発想が生まれ、 医学・生命科学の爆発的な発展につながった。
この記事では「誰が・いつ・何を発見したか」を時系列で理解し、 試験でも通用する知識に仕上げよう。
細胞説(Cell Theory)とは、以下の3つの原則からなる生物学の根本理論である。
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| ① 細胞構成の原則 | すべての生物は細胞からできている |
| ② 基本単位の原則 | 細胞は生命の基本単位である |
| ③ 細胞起源の原則 | すべての細胞は既存の細胞から生じる |
この3つを完全に覚えることがこの単元の目標。以下の歴史を読むと、なぜこの3原則が生まれたのかがわかる。
以下の年表で全体の流れを確認しよう。
- 1665年 ロバート・フック — コルクを観察、”cell” と命名
- 1683年 レーウェンフック — 生きた微生物を初観察
- 1838年 シュライデン — 植物は細胞からなると提唱
- 1839年 シュワン — 動物も細胞からなると提唱(細胞説の原型完成)
- 1855年 フィルヒョウ — 細胞は細胞から生じると提唱(細胞説の完成)
- 1859年 パスツール — 白鳥の首フラスコ実験で自然発生説を否定
自作の光学顕微鏡を使ってコルクを観察した。 コルクの断面が小さな部屋の集まりに見えたため、 ラテン語で「小部屋」を意味するcellと命名した。
ただし、フックが観察したのは実は死んだ細胞の残骸であり、 正確には細胞壁(植物細胞の外側の硬い壁)だけが残ったものだった。 生きた細胞の内部は当時まだ観察されていない。
※ フックの観察年 1665年 は頻出。著書「ミクログラフィア(Micrographia)」に記録された。
自作の高倍率顕微鏡(倍率約270倍)で、池の水・歯垢などを観察し、 初めて生きた微生物を発見した。 これらは単細胞生物であり、当時「アニマルキュール(小動物)」と呼ばれた。
レーウェンフックの発見により、「目に見えない小さな生き物」が実際に存在することが初めて証明された。 1683年に歯垢から細菌を観察したことが特に有名。
様々な植物を顕微鏡で観察し、 「植物はすべて細胞からできている」と提唱した(1838年)。
シュライデンの考えを動物に拡張し、 「動物も細胞からできている」と提唱した(1839年)。
この2人の研究によって「細胞説の原型」が完成した。 しかし当時は「細胞がどこから生まれるか」についてはまだ不明だった。
「すべての細胞は細胞から生じる」と主張し、 ラテン語で Omnis cellula e cellula(すべての細胞は細胞から)という言葉を残した。 これにより細胞説の第3原則が確立し、現代的な細胞説が完成した(1855年)。
フィルヒョウの貢献:新しい細胞は細胞分裂によってのみ生まれるという考えを根拠とした。 これは病理学にも応用され、「がん細胞も正常細胞の異常な分裂から生じる」という理解につながった。
フィルヒョウの「細胞は細胞から」という主張は、当時の主流だった 自然発生説と真っ向から対立した。
自然発生説とは?
「生物は無生物(泥・空気など)から自然に生まれる」という考え方。
例:腐った肉からウジ虫が湧く → 肉からウジ虫が「自然発生」すると信じられていた。
有名な白鳥の首フラスコ実験を行った。 首が長く曲がったフラスコで肉汁を煮沸すると、空気は通るが微生物は入れない。 → 肉汁は腐敗しなかった。 首を折ると微生物が入り腐敗した。 → 自然発生説を完全に否定し、「生物は生物からしか生まれない」ことを証明した。
パスツールのこの実験(1859年)により、細胞説の第3原則が強力に裏付けられた。
細胞の発見・細胞説の確立は顕微鏡の進化と切り離せない。
| 顕微鏡の種類 | 登場時期 | 分解能の目安 | 観察できるもの |
|---|---|---|---|
| 光学顕微鏡 | 17世紀〜 | 約0.2 μm | 細胞全体・核・ミトコンドリアなど |
| 電子顕微鏡 | 20世紀(1930年代〜) | 約0.2 nm | リボソーム・細胞膜・ウイルスなど |
光学顕微鏡では光を使うため分解能(見分けられる最小距離)に限界がある。 電子顕微鏡は電子線を使うため、はるかに高い倍率と分解能を実現した。
現在の生物学では、細胞説に以下の補足が加えられている。
- ・細胞はDNA(遺伝情報)を保有している
- ・すべての生命活動は細胞内で行われる
- ・細胞は細胞膜で外界と仕切られている
- ・真核細胞には核があり、遺伝情報が格納されている
- ・細胞内の細胞小器官がそれぞれの生命活動を担う
また、原核生物(細菌・古細菌)は核膜をもたない原核細胞からなり、 動植物・菌類は核膜をもつ真核細胞からなる。 どちらも細胞説の枠組みに含まれる。
最重要ポイントを整理する。「誰が・何を・いつ」のセットで覚えよう。
| 人物 | 年 | 貢献 |
|---|---|---|
| フック | 1665 | コルクを観察、cell と命名(死細胞) |
| レーウェンフック | 1683 | 生きた微生物を初観察・単細胞生物の発見 |
| シュライデン | 1838 | 植物はすべて細胞からなる |
| シュワン | 1839 | 動物も細胞からなる → 細胞説の原型完成 |
| フィルヒョウ | 1855 | すべての細胞は細胞から生じる → 細胞説完成 |
| パスツール | 1859 | 白鳥の首フラスコ実験で自然発生説を否定 |
流れで覚える:
フック(命名)→ レーウェンフック(生微生物)→ シュライデン+シュワン(細胞説原型)→ フィルヒョウ(細胞説完成)→ パスツール(自然発生説否定)
よく出る問題:
- ・「細胞説を完成させた人物は誰か」→ フィルヒョウ(第3原則の追加)
- ・「Omnis cellula e cellula」は誰の言葉か → フィルヒョウ
- ・「白鳥の首フラスコ実験の意義」→ 自然発生説の否定
- ・「cell と名付けた人物は誰か」→ ロバート・フック
- ・「最初に生きた微生物を観察した人物」→ レーウェンフック
- ・細胞説は「3つの原則」でできていることを確認
- ・フックが見たのは死細胞の細胞壁だった(生きた細胞ではない)
- ・シュライデンとシュワンは2人セットで「細胞説の原型」を完成させた
- ・フィルヒョウの言葉「Omnis cellula e cellula」はラテン語で「すべての細胞は細胞から」の意味
- ・パスツールの実験は「自然発生説」の否定であり、細胞説第3原則の証拠となった
- ・顕微鏡の分解能は光学 < 電子顕微鏡の順に高い
A. ロバート・フック
A. レーウェンフック
A. シュライデン
A. シュワン
A. フィルヒョウ
A. パスツール
A. Omnis cellula e cellula
A. 自然発生説
A. 細胞壁
A. 電子顕微鏡
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